出張の施術と訪問販売のルール|クーリング・オフの受け方と書面の備え
お客さまのご自宅やオフィスへうかがって施術する出張のスタイルは、特定商取引法の訪問販売として扱われる場面があります。訪問販売の考え方、クーリング・オフの申し出の受け方と期間の起算、訪問前にそろえておく書面と受付の手順を、開業前後の方向けに整理しました。
お客さまのご自宅やオフィスへうかがって施術する出張のスタイルは、サロンの中だけで完結する進め方とは、書面まわりの手順が変わります。特定商取引法の訪問販売として扱われる場面があり、その場合はクーリング・オフの決まりが関わってくるためです。ここでは、消費者庁の特定商取引法ガイドと国民生活センターの案内で確かめられる範囲の考え方を整理し、訪問前に手元をそろえるための手順に落とします。
出張の施術が「訪問販売」として扱われる場面
特定商取引法ガイドは、訪問販売とは、販売業者または役務提供事業者が、営業所等以外の場所(たとえば消費者の自宅)で取り決めを行う商品・特定権利の販売や役務の提供等のことをいう、と説明しています。あわせて、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売に関する規定は、原則としてすべての商品・役務と特定権利について対象になる、とされています。
同ガイドでは、最も一般的な形は消費者の住居をセールスマンが訪問して行う方法だとしたうえで、喫茶店や路上での販売、ホテルや公民館を一時的に借りるなどして行われる展示販売のうち、期間や施設等からみて店舗に類似するものとは認められないものも訪問販売に該当する、と説明されています。施術を提供する場所がサロンの中かどうか、という一点だけで線を引かず、どこで申し込みを受けているかを見ていく必要があります。
そこでまず、自分の営業の流れを紙に書き出します。予約の受け方、当日にお客さまと話す順番、その場で新しい申し込みを受けることがあるかどうかを、サロン内で受けている分と訪問先で受けている分に分けて並べます。分けたうえで、訪問先で受けている分について、どんな書面をお渡しするかを決めていきます。
クーリング・オフの申し出をどう受けるか
国民生活センターの案内によれば、クーリング・オフの期間は、申込書面と取り決めの内容を記した書面のうち、いずれか早いほうを受け取った日から起算します。書面の記載内容に不備があるときは、所定の期間を過ぎてもクーリング・オフできる場合がある、とも説明されています。つまり、いつ・どの書面をお渡ししたかを事業者側でも控えておくことが、そのまま起算日の確認材料になります。
通知の手段についても案内があります。書面によるほか、電磁的記録でもクーリング・オフの通知を行うことが可能で、電子メールのほか、USBメモリ等の記録媒体や、事業者が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等により通知を行う場合が挙げられています。FAXを用いたクーリング・オフも可能とされています。受け取る側としては、メールを取りこぼさない受付窓口をひとつに決め、ホームページ・LPのどこに問い合わせ先を置くかを、開業前のうちに決めておきます。
証拠の残し方についても記載があります。郵送の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことが薦められ、電磁的記録の場合には、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトの専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいとされています。事業者の側でも、申し出を受け取った日時と手段を、届いた順に記録へ残す手順を決めておきます。
なお特定商取引法ガイドは、クーリング・オフを行った場合、役務が既に提供されている場合でも消費者はその対価を支払う必要はなく、損害賠償や違約金を支払う必要もない、と説明しています。施術を終えたあとに申し出が届くこともある前提で、受け方をあらかじめ決めておきます。また国民生活センターは、クーリング・オフができないと事業者が言ったり、脅したりしてクーリング・オフができなかった場合には、所定の期間を過ぎてもクーリング・オフができる、としています。判断に迷う点は、お近くの消費生活センター等に相談する窓口があることも案内されています。
訪問前にそろえておくもの
訪問先で慌てないよう、持ち物と書面を先に固めます。書面に記す項目は特定商取引法ガイドで確かめながら決め、記入欄の形まで作っておきます。
サロンの名称・所在地・連絡先
書面に記す欄をあらかじめ用意します
施術の種類と内容
当日行う内容をその場で書き込める形にします
提供メニューの構成と支払いの時期・方法
前もって文章にしておきます
施術を行う日時
いつ提供するかを書面に残します
クーリング・オフに関する記載
書面へ入れる文言を先に用意します
書面をお渡しした日の控え
起算日を確かめる材料として残します
申し出を受ける窓口
メールと専用フォームの受信を誰が確かめるか決めます
そのうえで、予約を受けてから訪問後までの流れを一本につなげておきます。
予約を受けたとき
施術の内容と当日の流れを、予約確認のメールで文章にして送ります
訪問の前日まで
書面一式と控えを持ち物に入れ、記入欄が最後まで埋まるか確かめます
訪問して施術を始める前
書面をお渡しし、お渡しした日を控えに書き込みます
施術のあと
その場で新しい申し込みを勧めない進め方にそろえます
申し出が届いたとき
受け取った日時と手段を記録に残し、届いた順に整理します
出張の施術は、サロンという場所を離れて働き方を広げられる進め方です。だからこそ、どこで申し込みを受けているのかを自分で把握し、書面と受付の窓口を先に整えておきます。ホームページ・LPに予約フォームと問い合わせ先を置いておけば、訪問前のやり取りも訪問後の申し出も、同じ入口で受けられる形になります。