スタッフが10人未満の施術サロン、就業規則はどこまで先に書き出すか
スタッフが数名の施術サロンでも、就業規則の土台は先に作れます。厚生労働省のモデル就業規則のページが対象としている「常時10人以上」という線引きを確認したうえで、準備時間や歩合の扱いなど、開業前後に書き出しておく項目と進め方を整理します。
スタッフを1名、2名と迎える段階になると、「うちはまだ人数が少ないので、就業規則はいらない」という話を耳にします。たしかに、国が就業規則の届出について書いているページは、人数の線引きから始まっています。ここでは、その線引きを原文で確認したうえで、人数が届いていない段階の施術サロンで何をどこまで書き出しておくかを、開業前後の動きに沿って整理します。
まず「常時10人以上」という線引きを原文で読む
厚生労働省の「モデル就業規則について」のページには、次のように書かれています。
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
ここで名指しされているのは「常時10人以上の従業員を使用する使用者」です。スタッフが数名の段階は、この記述が対象としている範囲には入っていません。そして人数が増えて「常時10人以上」に届いた時点からは、作成と所轄の労働基準監督署長への届出が対象になり、内容を変えるときも同じく届け出る、と書かれています。
同じページには「次に掲載しております「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください」ともあります。つまり、土台にできる規程例と解説は、人数にかかわらず同じページで公開されています。人数が届いてから一から書き起こす形にするか、いま手元にある土台を使って先に書き出しておくかは、オーナーの側で選べる部分です。
施術サロンで先に文章にしておく項目
施術の仕事は、開店前の準備と閉店後の片づけ、予約の入っていない時間、指名や歩合の数え方など、時計とシフト表の上で扱いが分かれる場面が多くあります。面談で口頭で伝えて終わりにせず、次の項目を文章にして、スタッフに渡せる状態にしておきます。
開店前の清掃・着替え・準備
何時から勤務として数えるかを、時刻で書く
予約の入っていない待機時間
シフト表のどの区分に入れるかを決めて書く
歩合や指名の数え方
算定のもとにする数字と、締めの日を書く
急な欠勤・遅刻の連絡手順
連絡先・連絡の期限・代わりの手配の流れを書く
退職時のカルテと顧客名簿
返す物と返す先、退職日までの手順を書く
技術と手順の持ち出し
在職中と退職後に分けて、対象の範囲を書く
書き方をそろえる先は、規則の文章だけではありません。スタッフ募集の案内をホームページ・LPに載せるときは、始業・終業の時刻、休日の数え方、シフトの区分の呼び名を、規則の記述と同じ言葉にそろえます。読む人が最初に見る文章と、入店後に読む文章が別々の言い回しになっていると、あとから照らし合わせる手間が増えます。
モデル就業規則を土台に、自店の言葉へ書き換える
土台となるモデル就業規則は上記のページに掲載されています。開業日から逆算して、次の順番で進めます。
開業2か月前
モデル就業規則の規程例と解説をダウンロードし、章立てを通して読む
開業1か月前
始業・終業の時刻、休憩、休日、賃金の決め方と支払方法、退職の手順を自店の言葉に書き換える
開業3週間前
上のチェックリストの6項目を、施術の流れに沿って本文に足す
開業2週間前
シフト表・勤怠の記録方法と、規則の記述の言い回しをそろえる
開業直前
全スタッフに書面で渡し、店内でいつでも読める場所に備え付ける
開業後
人数・シフト・メニューの構成が変わったタイミングで記述を点検し、更新する
書き換えるときは、モデルの条文をそのまま残す部分と、自店の実情に合わせて書き足す部分を分けておきます。上記ページも「各事業場の実情に応じた就業規則を作成」と書いており、店舗ごとの実情を反映させることを前提にしています。ベッドの数、スタッフの人数、営業時間の区切り方は店ごとに違うので、時刻と区分は自店の実際のシフト表から書き写します。
助成金を使う予定があるなら、提出の順番を先に押さえる
制度を新しく設ける予定があるなら、提出物の順番を先に確認しておきます。厚生労働省のキャリアアップ助成金のページには、次のように書かれています。
・キャリアアップ助成金の活用に当たっては、各コース実施日の前日までに「キャリアアップ計画」(労働組合等の意見を聴いて作成)等を作成し、提出することが必要です。
「各コース実施日の前日までに」と書かれているとおり、計画の作成・提出はコースの実施日より前に済ませる順番です。同じページには「賞与・退職金制度導入コース」「短時間労働者労働時間延長支援コース」といったコース名も掲載されています。同ページには「計画届及び支給申請に必要な様式を、 申請様式ダウンロードページ に掲載しています」ともあり、様式は同ページからたどれます。
制度づくりと並行して進めるなら、規則の書き換え、コースの実施日、計画の提出日を1本の予定表に並べ、どれが先に来るかを目で見て確かめられる形にしておきます。
開業前後にやることの並べ方
整理すると、進め方は次の3つです。1つ目は、線引きの原文を読み、いまの店がどの範囲に入るかを自分で確かめること。2つ目は、施術の現場で扱いが分かれる6項目を文章にして、スタッフに渡せる状態にすること。3つ目は、モデル就業規則を土台に自店の言葉へ書き換え、渡す日と備え付ける場所まで決めておくことです。
人数が「常時10人以上」に届いた日は、あらかじめ予告されて訪れるものではありません。土台の文章が手元にあれば、その日に始めるのは書き起こしではなく、届出の準備からになります。開業の準備で決めた営業時間やシフトの区切りが記憶に新しいうちに、文章として1件ずつ書き留めておく形がとりやすいはずです。