ネイルサロンでスタッフを雇う前に確認する化学物質管理者の選任手順
スタッフを雇うネイルサロン向けに、化学物質管理者の選任が必要かをどう見分けるかを整理しました。SDSでリスクアセスメント対象物を確認する手順、JNAの講習会の受講資格と申し込み先、選任後に店内で周知するまでの段取りをチェックリストと逆算スケジュールでまとめています。
ひとりで回していたネイルサロンにスタッフを迎えると、それまで自分の感覚でやっていた製品の扱い方を、言葉にして共有する場面が出てきます。そのときに名前が挙がるのが「化学物質管理者」という役割です。何から手をつければよいのか、確認する順番に沿って整理します。
まず、使っている製品がリスクアセスメント対象物かを確かめる
厚生労働省のケミガイドでは、法律に従って自分たちで自律的に化学物質の管理を進める手順が「4つのステップ」に分けて説明されています。その入口は「こんな製品や化学物質を使っていませんか?」と「リスクアセスメント対象物に該当するか確認」で、「化学物質管理者の選任」はその後に置かれています。
同じページでは、赤枠で囲まれたGHSのマークがラベルに表示されている製品は危険性・有害性があるので取り扱いに注意するよう案内されています。そして、法律に従った管理が必要なリスクアセスメント対象物が含まれているかどうかは、SDS(安全データシート)を確認するよう示されています。
サロンでやることは地味な作業です。棚と作業台の製品を全部出し、ラベルを見て、メーカーや販売店からSDSを集め、1件ずつ読み合わせます。
棚と作業台にある製品を全部出す
ジェル、アクリル、リムーバーなど残量の少ないものも含める
ラベルのGHSマークを見る
赤枠で囲まれたマークがある製品は取り扱いに注意するよう案内されている
メーカーや販売店からSDSを集める
製品ごとに手元へ控えを残す
SDSでリスクアセスメント対象物の記載を照合する
該当の有無を製品名の一覧に書き込む
一覧を作業台の近くに置く
新しい製品を入れたときに追記する
選任が必要な事業場かどうかを見分ける
日本ネイリスト協会(JNA)のページには、化学物質管理者の選任義務の概要として、選任が必要な事業場は「リスクアセスメント対象物の製造、取り扱い」を行う事業場であり、業種・規模を問わず選任が必要と記載されています。根拠は労働安全衛生規則で、2024年(令和6年)4月1日施行、目的は事業場における化学物質に関する管理体制の強化と示されています。
同じページでは、ネイルサロンやネイル教育施設などで使用しているネイル製品には揮発性溶剤を含む化学物質が配合されているものがあり、その取り扱いにおいては化学物質リスクアセスメントに基づく管理が必要となることから、労働安全衛生法施行令等の一部改正により、2024年4月より化学物質管理者の選任が義務付けられたと説明されています。
つまり判断の順番は、「自分の店が扱う製品にリスクアセスメント対象物が含まれるか」を先に確かめ、そのうえで「誰が管理者になるか」を決める、という並びになります。人を決めてから製品を見るのではなく、SDSの確認から始めます。
講習の日程を先に押さえ、受ける人を決める
JNAは、ネイルサロンなどネイル製品を取り扱う事業所における、化学物質を安全に管理するための知識の普及に取り組んでいます。その一環として「ネイルサロン及びネイル製品を取り扱う事業所におけるJNA化学物質管理自主基準」を制定しており、これはJNAが定める自主基準で、ネイルサービスに関わる全ての方の安全と健康を守ることを目的に、化学物質のリスクアセスメントに基づいた化学物質管理に関する具体的な指針を定めるものです。全文が同ページに掲載されています。
講習会の名称は「JNAネイルサロン等化学物質管理講習会~化学物質管理者講習に準ずる講習会~」で、全国のJNA認定校で随時開催されます。実施日程・会場の情報は同ページで案内され、受講の申し込みは主催のJNA認定校で受け付けられます。受講資格は、①18歳以上(ただし18歳未満であっても、理美容学校やネイルスクール等でネイルを学んでいる生徒は対象)、②「ネイルサロン衛生管理士」取得者(有効期限者のみ)、③ネイルサロン、ネイル教育施設等のネイル業界に関わっている方、と示されています。
別の選択肢として、中央労働災害防止協会は、第三次産業向けに、出張研修で化学物質管理者、保護具着用管理責任者講習を受講しませんかという案内を出しています。自店から会場へ通う形にするか、研修に来てもらう形にするかで、動きやすい方を選びます。
雇用開始の2か月前
店にある製品を並べ、ラベルを見てSDSを集める
雇用開始の1か月半前
SDSを読み、リスクアセスメント対象物の記載を製品一覧に突き合わせる
雇用開始の1か月前
講習会の日程と会場を確認し、受ける人と申し込み先を決める
雇用開始の2週間前
管理を担当する人を決め、店内で共有する場所を用意する
雇用開始の当日
換気の動かし方とマスク・手袋の置き場所を、迎えたスタッフと一緒に確認する
決めたあとに店側で整えておくこと
担当する人が決まったら、その名前と役割をスタッフ全員が見られる形にします。店内の掲示、共有ノート、スタッフ用のチャットなど、普段いちばん目に入る場所に置きます。
あわせて、換気設備が実際に動くかを点検し、マスクや手袋を切らさないよう置き場所と補充の担当を決めておきます。SDSと製品一覧は、施術中でも手が届く場所に紙で置くと参照しやすくなります。
店の外向けの発信も、同じ内容から書けます。ホームページ・LPに衛生管理の考え方を書く欄を用意し、どの製品を使い、換気や保護具をどう扱っているかを自分の言葉で並べておきます。予約前に読みたい方への案内としてそのまま使え、スタッフを募集するときの説明にも流用できます。
新しく製品を入れたときは、一覧への追記をその日のうちに済ませます。入れ替えの多い品目ほど、後から思い出して書くのが難しくなるためです。