業務委託ネイリストへの報酬に源泉徴収は必要?ネイルサロンの判断手順と実態チェック
フリーランスのネイリストに支払う業務委託の報酬に源泉徴収が要るかを、国税庁の整理に沿って「報酬の種類」と「支払う側の立場」の順で確認します。名目ではなく実態で給与と扱われないための運用チェックリストも掲載します。
面貸しや業務委託でフリーランスのネイリストに入ってもらうとき、「報酬を払う際に所得税を天引きしなければならないのか」という疑問が出てきます。国税庁の整理では、報酬の源泉徴収は「源泉徴収の対象として挙げられている種類の報酬」を「源泉徴収義務者にあたる人」が支払うときに発生します。この記事では、この順番で確認する方法と、名目が業務委託でも実態が給与と扱われないための運用の点検項目をまとめます。
源泉徴収が要るかは「報酬の種類」と「支払う側の立場」で決まる
まず確認するのは報酬の種類です。国税庁のタックスアンサーでは、源泉徴収が必要な報酬の範囲は、受け取る側が居住者か内国法人かで異なると説明されています。居住者に支払う場合の代表例として挙がっているのは、原稿料や講演料、弁護士・公認会計士・司法書士など特定の資格を持つ人に支払う報酬といったものです。詳細は「源泉徴収のあらまし」で確認するよう案内されています。
ネイルの施術そのものは、こうした代表例とは性質が異なる仕事です。施術の報酬が対象の一覧に含まれていなければ、その報酬について「報酬としての源泉徴収」は不要という整理になります。ここは思い込みで済ませず、一覧を自分の目で確かめておきます。
あわせて押さえたいのが名目の扱いです。国税庁は、謝礼・研究費・取材費・車代などの名目で支払われていても、実態が報酬と同じであれば源泉徴収の対象になると示しています。金銭ではなく物品などの経済的利益で支払う場合も報酬に含まれます。施術以外の仕事を同じネイリストに頼むときは、その仕事が対象の種類にあたらないかをその都度確認します。
スタッフを雇っていないサロンと、給与を払っているサロンで扱いが変わる
次に確認するのは、支払う側であるサロンの立場です。国税庁は、報酬の支払者が個人であって給与等の支払者でないときは、ホステス等に報酬を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はないとしています。家事使用人にだけ給与を払っている場合にも、人数の条件つきで同じ扱いがあります。オーナーだけで営み、誰にも給与を払っていないサロンは、この整理を最初に確認します。
別のページでも、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などは源泉徴収が不要で、例として会社員が確定申告のために税理士に報酬を支払う場合が挙げられています。
注意が必要なのは、家族に給与を払っているサロンです。国税庁は、青色専従者給与を含む給与等の支払がある個人は、その給与について納付すべき税額がない場合でも、源泉徴収の対象となる報酬を支払う際には源泉徴収しなければならないと注意を促しています。配偶者に専従者給与を払っているオーナーは、自分が源泉徴収義務者にあたる前提で考えます。
一方で、スタッフを雇い給与を払っているサロンであっても、委託先のネイリストに支払う施術の報酬が対象の種類に入っていなければ、その報酬について源泉徴収は生じないという整理になります。「源泉徴収義務者かどうか」と「その報酬が対象かどうか」は別々に確認します。
名目が業務委託でも、実態が給与なら給与として源泉徴収する
ここまでは「報酬として払う」場合の話です。国税庁は、報酬が給与等または退職手当等に該当するものについては、それぞれ給与所得または退職所得としての源泉徴収を行うと示しています。つまり、書面の名目が業務委託でも、実態が給与にあたるなら給与としての源泉徴収が必要になります。
実態をどの要素で見るかは個別の事情によります。サロン側でできるのは、業務委託として取り決めた内容と現場の運用を突き合わせ、ずれがないかを点検することです。次のチェックリストは、税理士や税務署に相談するときの整理用として使います。判定を決めるものではありません。
仕事を受けるか断るかをネイリスト自身が決められる
予約が入っても受けない選択ができる
出勤日や勤務時間をサロンが指示していない
施術予約に合わせた調整は、指示ではなく合意として書面に残す
他のサロンや自宅サロンとの掛け持ちができる
取引先を複数件持つことを妨げていない
道具や材料の負担区分を書面で決めている
実際の負担が書面どおりになっている
報酬は施術の成果に応じて計算している
拘束時間あたりの固定額になっていない
ネイリストが自分の名前で請求書や施術明細を発行している
発行者がサロンになっていない
報酬は給与とは別の科目で記帳し、振込記録を残している
現金手渡しで記録が残らない状態にしない
募集案内やホームページ・LPの表現と実際の働き方が一致している
「シフト制」「時給」など雇用を連想させる言葉を使っていない
迷ったときの進め方
判断に迷う点があれば、自己判断で確定させず、次の順で進めます。
- 業務委託の書面と現場の運用を並べ、チェックリストでずれを洗い出します。
- ネイリストが発行した請求書や施術明細、口座振込の記録を月ごとに保存し、帳簿では給与と別に区分して記帳します。
- 実態が雇用に近いと感じる点や、対象の種類に入るか判断がつかない報酬がある場合は、書面案と実際の運用を示して顧問税理士か所轄税務署に個別に確認します。
- 雇用に切り替える場合は、新たに給与の支払を始めて源泉徴収義務者となる際に「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与を支払う事業所の所在地を所轄する税務署長に、開設から所定の期限内に提出します。
取り決めの前
施術の報酬が源泉徴収の対象一覧に入るか、自分が源泉徴収義務者にあたるかを確認する
開始時
諾否の自由・時間の扱い・道具や材料の負担区分・報酬の計算方法を書面にする
毎月
ネイリスト発行の請求書と振込記録を保存し、給与と別の科目で記帳する
雇用に切り替えるとき
給与支払事務所等の開設届出書を所轄税務署長へ提出する
源泉徴収の要否は「報酬の種類」「支払う側の立場」「実態が給与かどうか」の順に確認します。書面と運用を一致させ、記録を残したうえで、判断がつかない部分は早めに専門家へ相談してください。