ネイルサロンの賠償責任保険を開業前に整える手順
自宅や小さなネイルサロンを開く前に、施術中のケガや預かり物の破損に備える賠償責任保険をどう整えるか。いま加入している保険の対象範囲の確かめ方、自宅を使うときの火災保険の窓口への伝え方、トラブルが起きた日のその場の対応までを、手順の形で整理します。
ネイルサロンの開業準備は、内装や道具、予約の受け方に目が向きがちです。そこに一つ加えておきたいのが、お客様やその持ち物に損害が生じたときの備えです。特に自宅の一部をサロンにする場合は、住まいとして入っていた保険のままでよいのかという疑問が残ります。ここでは、開業前に自分で進められる確認の手順をまとめます。
まず「どんな場面で困るか」を書き出す
保険の商品名から入ると、どれを選べばよいのか判断がつかなくなります。先に、自分のサロンで起こりうる場面を具体的に書き出してください。書き出した場面をそのまま持って窓口に相談すると、話が具体的になります。
床が濡れていて、来店したお客様が転んだ
店内の設備や管理に関わる場面
預かった上着やバッグを汚した、壊した
お客様の持ち物に関わる場面
施術で使った材料でお客様の肌に不調が出た
施術そのものに関わる場面
販売した商品を使ったお客様に不調が出た
販売した商品に関わる場面
出張で伺った先で、相手のお宅の物を壊した
店舗の外での場面
自宅の一室を使っていて、住まい側にも影響が及んだ
建物の使い方に関わる場面
出張の施術をするかどうかで、必要な範囲は変わります。店舗を持たずに出張だけで始める予定なら、その点を最初に伝えてください。
いま入っている保険が業務中も対象かを確かめる
すでに個人で賠償の備えに入っている方もいます。日本損害保険協会の説明では、個人賠償責任保険は、モノを壊したり、他人にケガをさせてしまったときなどに、法律上の損害賠償責任を負担する場合に保険金が支払われるものとされています。主な事故として挙げられているのは、自転車で通行人にケガをさせてしまった、買い物中に商品を壊してしまった、飼い犬が他人に噛み付いてケガをさせてしまった、といった場面です。また、自動車保険や火災保険、傷害保険などの特約としてセットで加入できること、ひとつの保険で家族が起こした事故に対応することも説明されています。
つまり、説明されているのは日常生活の場面です。サロンの施術中や店舗の運営中に起きた事故がその範囲に入るかどうかは、自分の加入先に確認してください。確認するときは、次の三つを聞くと話が早く進みます。
- 自宅の一室で有償の施術をしている最中の事故は、いまの加入内容の対象に入るか
- お客様から預かった持ち物の汚損や破損は対象に入るか
- 対象外なら、業務向けにどの区分の備えを足すことになるか
ネイルサロン向けの賠償補償の保険を取り扱う会社もあります。たとえば株式会社エヌシーアイは、エステティックサロンやネイルサロン向けの賠償の保険を取り扱い、加入後も事故対応の担当者が対応すると案内しています。複数の窓口に同じ三つを聞いて、返ってきた説明を並べて比べてください。
自宅をサロンにするなら、火災保険の窓口にも伝える
自宅の一部を営業に使うと、建物の使い方が住まいだけのときと変わります。加入している火災保険の窓口に「住居の一室をネイルサロンとして使う」と伝え、いまの加入内容のままでよいか、区分を変える必要があるかを確認してください。伝えるのは、使う部屋の広さ、来客の有無、使う機器、営業を始める予定日です。開業の直前ではなく、準備の途中で一度連絡を入れておくと、確認の返事を待つ時間を見込めます。
開業2か月前
起こりうる場面を書き出し、出張の有無を決める
開業1か月前
いまの加入内容の対象範囲を加入先に確認する
開業3週間前
自宅を使う旨を火災保険の窓口に伝え、区分の扱いを確認する
開業2週間前
業務向けの備えを申し込み、開始日を営業開始日に合わせる
開業1週間前
同意事項と当日の説明の流れを決め、書面を用意する
開業後すぐ
事故が起きたときの連絡先を、店内の紙とスマートフォンの両方に置く
施術前の説明と、同意事項の書き方
トラブルの多くは、当日の説明の抜けから始まります。施術前にお客様へ伝える内容を紙にして、読んでもらってから署名をいただく形にしてください。項目は、体調や肌の状態の申告、過去に材料でかゆみや赤みが出た経験の有無、当日の持ち物の預かりの扱い、施術後に異変を感じたときの連絡先です。同じ内容をホームページやLPの予約案内の近くにも載せておくと、来店前に読んでもらえます。
書面は、専門的な言い回しを避けて短くしてください。読まずに署名される書面は、後から役に立ちません。
事故が起きた日にやること、やらないこと
その場での判断が後々まで残ります。次の順番で動いてください。
- お客様の状態を確認し、必要なら公的な緊急の連絡先に連絡する
- 起きたことを、日時・場所・状況・使っていた材料まで含めてその場で記録する
- 加入している保険の事故受付の窓口に、当日中に連絡して指示を仰ぐ
- お客様には「加入先に確認のうえ、あらためてご連絡します」と伝える
その場で支払いの約束をしたり、自分の非をどこまで認めるかを口頭で決めたりしないでください。損害の範囲や責任の割合は、後から確認して決まります。先に約束をしてしまうと、加入先へ相談する前に話が固まってしまいます。写真は、お客様の同意を得た範囲で残してください。
認定制度を目指すなら、あわせて確認する
日本ネイリスト協会は、JNA認定ネイルサロン制度について、確かな技術を提供し、衛生管理やコンプライアンスなど、高いレベルでお客様に信頼していただける、安全で安心なサロンであることを示す基準として設けている、と説明しています。認定の申請を考えているなら、求められる要件を協会の案内で確認し、保険の準備と同じ時期に整理しておいてください。開業直後は手が回らなくなるため、どの順番で進めるかだけでも先に決めておくと動きやすくなります。