カフェの来客用フリーWi-Fi、分け方と利用規約の決め方
カフェで来客用のフリーWi-Fiを用意するときに、店の業務用ネットワークと分ける考え方、機器側で確かめておく設定、接続画面に出す利用規約と免責の書き方、そして困ったときの公的な相談窓口までを、開店前から順に決めていける手順としてまとめました。
来客に自由に使ってもらえるWi-Fiは、カフェでよく用意されるサービスのひとつです。一方で、機器をつないで電波を飛ばせば終わり、というものでもありません。総務省は、無線LANの利用に当たっては、必要なセキュリティ対策を講じなければ、通信内容が盗み見られるなどの被害が発生する場合があるとしています。また、公衆Wi-Fiの提供者に向けたガイドラインとして「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」を作成しており、飲食店や小売店等をはじめとする、公衆Wi-Fiを提供する幅広い提供者を対象としています。
つまり、来客用Wi-Fiを出す店は「利用する側」ではなく「提供する側」に立ちます。ここでは、開店前や導入前に自分で決めておける内容を、順番に整理していきます。
来客用と店の業務用を、はじめに分けて考える
最初に決めるのは、ネットワークをどう分けるかです。レジや決済端末、予約の管理に使うパソコンやタブレットは、店の業務用として扱います。来客に開放するWi-Fiは、それとは別の入口として用意します。
紙に書き出す形で構いませんので、次を先に決めておきます。
- 店の業務でネットにつなぐ機器を、すべて書き出す
- 来客に開放する電波の名前(SSID)を、業務用とは別に用意する
- 来客側から店の業務用機器へ入れない状態にする方法を、機器の説明書で確かめる
- 機器の設定を触れる人を、店内で決めておく
導入する機器によって、設定の呼び名や手順は変わります。カタログの言葉だけで判断せず、購入前に販売店へ「来客用と業務用を分けて使いたい」と伝え、その機器でできるかを確かめておくのが確実です。
機器側で確かめておく設定
機器が届いたら、電波を飛ばす前に設定画面を開きます。確かめる項目をチェックリストにしました。
管理者パスワードを変える
初期値のまま使わず、推測されにくい文字列にする
ファームウェアを最新にする
更新の通知を受け取る方法もあわせて決めておく
来客用と業務用を別々にする
来客側から業務用の機器が見えない状態か確かめる
端末どうしの通信を止める
来客の端末から別の来客の端末へ届かない設定にする
暗号化の設定を確かめる
機器の説明書で選べる方式を確認し、暗号化なしのまま公開しない
管理画面を店内からだけ開けるようにする
外からログインできる状態のままにしない
接続の記録の残り方を確かめる
どの記録がどれだけ残るかを把握しておく
定期的に設定を点検する日を決める
担当と頻度を決め、店のルールに書いておく
一度設定して終わりにせず、点検する日を決めておくところまでがセットです。担当者が交代したときに引き継げるよう、設定した内容はメモに残しておきます。
接続画面に出す利用規約と免責を用意する
来客がWi-Fiにつなぐとき、最初に開く画面(ポータル画面)に、利用のきまりを表示する方法があります。そこで、接続を始めた時点で内容に同意したものとみなす、という流れを文章にしておきます。
用意しておく文面は、たとえば次のような項目です。
- 誰が使えるか(店内の来客のみ、など)
- 使い方として断ること(法令に反する使い方、他の来客の迷惑になる使い方など)
- 通信の安全について、来客自身にも注意してもらいたいこと
- 店がどこまで責任を負うかの範囲
- 接続の記録を一定期間残すこと、その扱い方
責任の範囲を書くときは、すべての責任を負わないという一方的な書き方にしないよう、表現を調整します。ここは店の判断だけで決めきらず、文面を固める前に法律の専門家に目を通してもらうと安心です。
同じ内容は、店のホームページ・LPにも掲載しておきます。接続画面は文字数が限られるため、詳しい説明はサイト側に置き、接続画面からはその見出しだけを示す、という組み立て方ができます。プライバシーポリシーで、記録の扱いについても書いておきます。
開店までの進め方
決めることが多く見えますが、順番に並べると流れは単純です。
機器を選ぶ前
業務で使う機器を書き出し、来客用と分ける方針を決める
機器を選ぶとき
分けて使えるか、管理画面をどう守るかを販売店に確かめる
機器が届いたら
チェックリストの設定を一つずつ確かめ、内容をメモに残す
文面をつくるとき
利用のきまりと責任の範囲を書き、専門家に見てもらう
公開の前
ホームページ・LPに規約とプライバシーポリシーを載せる
開店したあと
点検の日と担当を決め、記録の残り方を定期的に確かめる
困ったときに相談できる窓口
自店だけで判断がつかないときのために、公的な相談先を控えておきます。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)は「情報セキュリティ安心相談窓口」を開設しており、一般的な情報セキュリティ(主にウイルスや不正アクセス)に関する技術的な相談に対してアドバイスを提供しています。また、中小企業向けに「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を紹介しています。
被害にあったかもしれない、という段階では、警察庁のサイバー警察局のサイトに「サイバー事案に関する相談窓口」が案内されています。通報・相談等のオンライン受付窓口や、都道府県警察の連絡先がまとめられています。
窓口の連絡先は、開店前に店のマニュアルへ書き写しておきます。何か起きてから調べ始めるより、手元にある状態にしておくほうが動きやすくなります。
来客用Wi-Fiは、店にとってはサービスのひとつですが、提供する側の立場に立つ以上、決めておく内容があります。ネットワークを分ける、機器の設定を確かめる、きまりを文章にする。この順に進めていけば、開店の準備のなかで無理なく組み込めます。