カフェの売れ残りを寄付するときの損金処理と食品衛生の手続き
カフェやベーカリーの売れ残りをフードバンクや子ども食堂へ提供するとき、寄附金ではなく廃棄処理の一環として扱うための合意書・台帳の整え方と、受入先への事前確認や衛生面の受け渡し手順をまとめます。
閉店後に残った焼き菓子やパンを、捨てずにフードバンクや子ども食堂へ渡したい。そう考えるカフェやベーカリーのオーナーが最初につまずくのが、「税務上どう扱うのか」と「食中毒などの責任をどう管理するのか」です。この記事では、国税庁の質疑応答事例と農林水産省・厚生労働省の公開情報をもとに、寄付を始める前に整える書類と手順をまとめます。
寄附金ではなく「廃棄処理の一環」として扱うための条件
国税庁の質疑応答事例には、社内の商品管理ルール上は通常の販売が難しくなった食品を、フードバンクに無償で回収してもらう法人の事例が載っています。この事例では、次の事実関係が認められることを理由に、提供にかかる支出を寄附金以外のものとして取り扱えるとされています。
- 社内ルールに従って廃棄予定となった食品をフードバンクが回収するもので、実質的に商品の廃棄処理の一環として行われる取引であること
- フードバンクとの合意書で、提供した食品の転売等の禁止、取扱いに関する情報の記録と保存、結果の報告などのルールを定め、目的外に使われないことが担保されていること
- 提供した食品の使途を、提供した側でも確認できること
同じ事例では、提供にあたって消費者庁が公表している「食品寄附ガイドライン」を参考に、食品の品質確保・管理について取り決めたことにも触れています。農林水産省のページによると、このガイドラインは食品寄附等に関する官民協議会で策定されたもので、それまでの手引きは廃止され、内容はガイドラインに包含されています。合意書の項目を考えるときは、このガイドラインを手元に置いて進めます。
カフェに置き換えると、整えるものは次の順です。
- 店内の廃棄基準を紙に書く。 「焼き上げから何日で販売をやめるか」「包装が破れたものはどうするか」など、販売をやめる基準を先に決め、寄付はその基準に当てはまった品だけを対象にします。
- 受入先と合意書を交わす。 転売の禁止、取扱い記録の作成と保存、結果の報告、品質や衛生の責任の分担を項目に入れます。
- 使途を確認できる記録を残す。 受領書と報告をファイルし、どの日の何が誰に渡ったかを後から追えるようにします。
なお、この事例は法人からの照会に対する回答です。個人事業主として営むカフェの場合は、同じ書類を揃えたうえで、確定申告での扱いを税務署や税理士に確認してから始めます。農林水産省のページにも、フードバンクに係る税制についての資料が案内されています。
受入先へ最初に問い合わせるときの質問票
受入先は自分で探すこともできますが、農林水産省のページでは地方農政局ごとにフードバンク活動団体の紹介や、活動団体と協力企業のマッチング特設ページが案内されています。まずここで地域の団体を把握し、初回の問い合わせはメールなど、あとから読み返せる方法で行います。聞く項目は次のとおりです。
受け入れられる品目
常温で保存できる焼き菓子、未開封の包装食品など、渡せる品の範囲
賞味期限の残り日数の条件
受け取り時点で何日残っていれば受け入れられるか
受け取りの方法
店への回収か持ち込みか、曜日と時間帯、保冷の要否
合意書の締結可否
団体側にひな形があるか、転売禁止・記録・報告の項目を入れられるか
受領書の発行
受け取りごとに品名と数量を記した受領書を出してもらえるか
使途の報告
配布先や配布日の報告をどの頻度・形式で受け取れるか
表示の要件
原材料、アレルゲン、期限、製造者の表示にどこまで求められるか
衛生面については、厚生労働省の食品のページに「子ども食堂における衛生管理のポイント」や食中毒予防のポイント、営業許可・営業届出の案内が掲載されています。受入先と話す前に目を通し、自分の店の品がどの扱いになるかを確かめておきます。同じページには、食品衛生基準行政が消費者庁に移管されたことも記されているため、基準に関わる情報は消費者庁の案内もあわせて確認します。
自家製の焼き菓子を渡す場合は、店側で次のルールを決めておきます。
- 原材料、アレルゲン、期限、製造者の表示がそろった個包装の品だけを寄付の対象にする
- バラ売りの品や表示が欠けた品は寄付に回さず、店で廃棄する
- 調理後の生ものや日持ちしない品は、受入先が可能と答えた場合でも、初回は対象から外して様子を見る
受け渡しと台帳の運用手順
税務と衛生の両方に備えるため、受け渡しの記録は「食品寄付・廃棄管理台帳」として、まとめて残します。項目は次のとおりです。
- 提供日
- 品名と数量
- 仕入や製造にかかった原価
- 賞味期限
- 受領団体名
- 受領書の番号
台帳には、受入先から受け取った受領書と合意書の写しをつけて、確定申告の書類と同じ場所に、同じ期間保管します。寄付に回さず店で廃棄した品も同じ台帳に書き、廃棄基準どおりに運用した記録として残します。
開始前
店内の廃棄基準を書面にし、寄付の対象品目を決める
問い合わせ
質問票をもとに受入先へメールで確認し、返答を保存する
合意書
転売禁止・記録・報告・衛生責任の分担を入れた合意書を交わす
初回の受け渡し
表示のそろった個包装の品だけを渡し、受領書を受け取る
毎回
台帳に提供日・品名・数量・原価・期限・受領書番号を記入する
申告時
台帳・受領書・合意書をそろえ、扱いを税理士や税務署に確認する
取り組みをホームページ・LPに載せる場合は、合意書を交わして受け渡しが回り始めてからにし、実際に行っている範囲だけを書きます。受入先の団体名を載せるときは、事前に団体へ確認します。