カフェのテイクアウト、消費期限・賞味期限を根拠から決める手順
焼き菓子や惣菜をテイクアウトで売るときの期限表示を、公開されている制度の入口と、微生物試験・理化学試験・官能評価という客観的な項目の考え方から整理します。保健所や検査機関に相談する前にそろえる情報と、決めた根拠の残し方までまとめました。
店頭で出しているお菓子や惣菜を、袋に入れて持ち帰ってもらう。やることは増えないように見えて、ラベルに入れる「消費期限」「賞味期限」の欄で手が止まる方は多いはずです。何日と書けばよいのか、その日数をどう説明できる形にするのか。ここでは、公開されている制度の入口と、期限を決めるために行う試験の考え方、そして相談に行く前にそろえておく情報を、順番の形で整理します。
まず制度の入口を確認する
消費者庁のサイトでは、食品表示法等に基づく食品表示の取組が紹介されています。法令・政令・府令・Q&A等、説明会や意見募集の案内に加えて、「期限表示やアレルギー表示等、健康の保護を図るための表示の制度」を扱う区分、そして食品表示法の相談・被疑情報の受付窓口が置かれています。自分の解釈で進めずに、迷ったら戻ってくる場所として、この入口をブックマークしておきます。
呼び分けも先に押さえます。腐敗・劣化しやすい食品は「消費期限表示食品」、品質が比較的長く保持される食品は「賞味期限表示食品」として扱われます。惣菜や生菓子と、焼き菓子とでは、後述する試験の組み立ても変わります。
期限の根拠になる客観的な項目
「食品期限表示の設定のためのガイドライン」の改訂に伴い、加工食品の賞味期限・消費期限の設定には、より科学的・合理的な根拠が求められています。設定に際しては「食品の特性等に応じた客観的な項目(指標)及び基準」に基づく必要があるとされ、理化学試験、微生物試験、官能検査等において数値化することが可能な項目を設定する必要があるとされています。
品目ごとの組み合わせは、日本食品分析センターのページに整理があります。消費期限表示食品では、主に衛生指標菌を見る微生物試験と、担当者による簡易的な官能評価(外観観察、簡易官能評価)。賞味期限表示食品では、ビタミン、水分、水分活性、pH、酸価、過酸化物価といった理化学試験。官能評価には、パネリストが対照品(製造直後品、冷凍保存品など)と外観・におい・風味を比べ、結果を統計解析する進め方も示されています。
もうひとつ、期間の設計にかかわる点があります。一般的には、食品の特性等に応じた「安全係数(一未満の係数)」の設定が必要とされているため、実際の保存試験は、表示しようとする期限と同じかそれ以上の期間で設計する必要があるとされています。なお、加速度での試験方法についてはガイドライン中に方法の取り決めがないため、同センターでは、まず問い合わせから相談するよう案内されています。
相談の前にそろえる商品情報
保健所や検査機関に話をしに行く前に、商品側の条件を紙一枚にまとめておきます。決まっていない項目があるほど、相談は仮の話になります。
販売するメニュー一覧
焼き菓子・惣菜などを一件ずつ、品目名と原材料で書き出す
保存する温度帯
常温か冷蔵か、店頭と持ち帰り後に想定する条件を決める
包装の形
個包装にするか、脱酸素剤・乾燥剤を使うかを決める
表示したい期限の目安
何日と書きたいかを仮に置き、試験の期間設計の出発点にする
測る項目の候補
微生物試験・理化学試験・官能評価のどれを行うか案を持つ
サンプルの送り方
試験の温度条件と、送るときの梱包方法を事前に確認する
根拠資料の置き場
試験結果と、期限を決めた考え方をまとめて残す場所を決める
レシピが動くと、試験も最初から組み立て直すことになります。相談に入る前に、原材料・製法・包装を固めて、しばらく変更しない状態にしておきます。
新メニューは逆算で進める
レシピを固める
原材料・製法・包装を決め、動かさない状態にする
保健所へ事前相談
販売予定の品目と、必要になる検査項目を確認する
検査機関へ相談
試験の項目、保存温度、サンプルの送り方を決める
保存試験を実施
表示したい期限と同じかそれ以上の期間で設計する
期限を決めて表示
安全係数を踏まえて期限を定め、ラベルに反映する
根拠を保管
試験データと判断の経緯を、説明できる形でまとめておく
試作の段階で公設の機関にも相談する
東京都立産業技術研究センターの事例では、食品技術センターが企業と一緒に加工条件を確認し、超微粒玄米粉を用いた小麦代替麺でロール式製法による製麺に成功し、試作したものの物性評価(硬さなど)も実施したことが紹介されています。同センターの研究員は「都産技研は製品を作って売ることはできません。ですが、アイデアと課題を持ってきていただければ、技術相談として対応することが可能です」と述べています。参加した企業側からも「研究機関というとハードルが高く感じるかもしれませんが、実際には非常に親身になっていただけます」という言葉が紹介されています。新しい商品を組み立てている段階なら、相談先の候補として名前を控えておきます。
決めた内容を店の情報にそろえる
期限が決まったら、ラベルに入れる内容と、お客さまに向けて出している案内を同じ状態にそろえます。保存方法(常温・冷蔵)、持ち帰りできる品目、予約や問い合わせの受け方。ホームページ・LPに書いてある持ち帰りの説明が古いままだと、店頭の表示と食い違ったままになります。
最後に、根拠の保管です。どの試験を、どの温度で、どれだけの期間行い、そこからどう考えて表示の期限にしたのか。この流れを一つのフォルダにまとめ、後から自分の言葉で説明できる状態にしておきます。メニューを入れ替えるたびに同じ形式で足していけば、次の一件からは相談も試験の準備も、埋める項目をなぞるだけで進められます。