マイボトル持参のドリンク提供、カフェが決めておく衛生の手順
お客さまが持参したボトルやカップにドリンクを注ぐとき、カフェの側で先に決めておきたい受け入れの条件と段取りをまとめました。受け取ったときに見る項目、注ぐときの動き、店頭とホームページ・LPでの案内のそろえ方まで、そのまま現場で使える形で整理します。
お客さまが持ってきたボトルやカップにドリンクを注ぐ。動きとしては一杯の提供にすぎませんが、店の器具ではない入れ物が作業台に載る、という点で普段の提供とは条件が変わります。中がどう洗われてきたかを店の側で確かめようがない入れ物を扱うことになるからです。
だからこそ、受け入れるかどうかをその場のスタッフの判断に任せず、先に文章にしておきます。この記事では、受け入れの条件、受け取ったときに見る項目、注ぐときの動き、そして案内の出し方の順に、決めておく中身を並べます。
先に決めておく受け入れの条件
厚生労働省は、安全な食品を製造するための衛生管理手法として「HACCP(ハサップ)」を紹介しており、その考え方を取り入れた衛生管理のための手引書を公表しています。手引書には小規模な一般飲食店向けのものがあり、詳細版と概要版が並んでいます(作成団体:公益社団法人 日本食品衛生協会)。自店の衛生管理の書き方を組み立てるときは、まずこの手引書のうち自店の規模に合うものを開くところから始めます。
そのうえで、持参された入れ物についての扱いを次の三点に分けて書き出します。
- 受け入れる入れ物の条件(どういう状態なら注ぐか)
- 店では行わないこと(持参された入れ物の内側の洗浄・すすぎは行わない、など)
- 条件に達しないときの代わりの出し方(店の使い捨てカップで出す、など)
「店では行わないこと」を先に書いておくのがポイントです。書いていないと、忙しい時間帯に「洗ってあげようか」という判断がその場で生まれ、店の洗い場に外から来た入れ物が入ります。やらないと決めたことこそ、文章の側に置いておきます。
なお、営業許可や営業届出については厚生労働省の食品のページで案内されています。自店の提供のしかたが届出の扱いにどう関わるか迷う場合は、この記事の内容で判断せず、所管の保健所に自店の状況を伝えて確認してください。
受け取ったときに見る項目
カウンターで入れ物を受け取ってから注ぐまでの数秒で、スタッフが何を見るかを項目にします。項目を絞り、全員が同じ順番で見られる形にします。
ふたと本体がそろっているか
片方だけ渡されたときは声をかけて確認する
内側に汚れや着色が残っていないか
底とふたの裏側まで目を通す
内側が乾いているか
水滴が残っている場合は状態を確認する
飲み口・ねじ山に汚れがないか
手が触れる部分と口が触れる部分を分けて見る
におい
ふたを開けた時点で前の中身のにおいが残っていないか
破損・ひび・パッキンの外れ
注いだあとに漏れる形状になっていないか
容量と注ぐ量が合っているか
表示がない場合は少なめに注ぐ量を決めておく
温かい飲み物を入れてよい形状か
判断がつかないときは受け入れない側に倒す
そして、項目に達しないときの言い方も一緒に決めておきます。「今日はこちらのカップでお出ししますね」のように、断る文ではなく代わりの出し方を差し出す文にしておくと、スタッフが言い出しやすくなります。どの項目で止めたかを口にする必要はありません。
注ぐときの動き
注ぐ場面では、店の器具と持参された入れ物が触れない形を作ります。
- 入れ物はお客さまから直接受け取り、ふたは店側で外さず、お客さまに外してもらうか、専用のトレーの上に置いてもらう
- 注ぐ位置を作業台の一角に決め、そこ以外に持参された入れ物を置かない
- ドリップノズルやピッチャーの注ぎ口を、入れ物の口や内側に触れさせない高さで注ぐ
- 注ぎ終えたら、ふたはお客さまに閉めてもらう
- 置き場所として使った一角を拭き、次の作業に移る
- 途中で入れ物に触れた場合は、その時点で手を洗ってから店の器具に戻る
これらを、既存の衛生管理の記録と同じ紙の中に並べます。別紙にすると開かれなくなるので、毎日見ている記録の続きに置きます。
店頭とホームページ・LPで案内をそろえる
決めた条件は、店の中だけに置かず、お客さまが持ってくる前に読める場所に出します。店頭のPOP、メニューの持参ドリンクの欄、そして自店のホームページ・LPに、同じ文言を載せます。書く中身は次のようなものです。
- 洗って乾かした状態の入れ物をお持ちいただきたいこと
- 店では入れ物の内側の洗浄を行わないこと
- 状態によっては店のカップでの提供に切り替える場合があること
- 持ち帰られたあとは早めに飲みきっていただきたいこと
三か所で言い回しが違うと、店頭で説明するスタッフが自分の言葉に置き換えることになります。文章はひとつ作り、それを三か所に写します。あとから条件を変えるときも、同じ三か所をまとめて書き換えます。
導入までの段取りは、次の順に進めます。
条件を決める
受け入れる入れ物の条件、店では行わないこと、代わりの出し方を文章にする
手引書に当てる
自店の規模に合う手引書を開き、自店の衛生管理の書き方に組み込む
目視の項目を配る
カウンターに貼れる大きさで項目を印刷し、置き場所を決める
声かけを合わせる
断る場面の言い方をスタッフ全員で一度声に出して合わせる
案内を出す
店頭POP・メニュー・ホームページ・LPに同じ文言を載せる
運用してから整える
実際に受け取った場面で迷った点を書き留め、条件の文章に戻す
持参された入れ物への提供は、店の器具ではないものを扱う分だけ、判断の場面が増えます。その判断をひとつずつ文章にしておくことが、この取り組みの中身そのものになります。まずは「店では行わないこと」の一行から書き始めてください。